無防備な寝顔



非常灯が照らす薄暗い廊下を私たちは走っていました。
どうしてここにいたのかなぁ?
とにかく、誰かに見つかる前に逃げ出さなくちゃ。
廊下はとても長くて、たくさんのお部屋に繋がっているみたいです。
私の前を走っていたシベリンさんが、壊れかけたドアの前で足を止めました。
他の部屋とは違って大きな扉です。部屋ナンバーもありません。
静かに呼吸を整えると、シベリンさんがドアノブに手をかけました。
軋んだ音を立ててドアが開きました。
「ここで少し休もう」
「はい・・」
離れないようにシベリンさんの服の裾をぎゅっと握りしめて、ティチエルは部屋の中に入りました。
そこは明かり取りの窓から微かに光が差し込んでいました。
天井まで山積みされたダンボール。棚にはぎっしりとシーツやタオル・・・置いてある物から察すると、この部屋は倉庫みたいです。
きょろきょろ辺りを見回しているうちに、シベリンさんは隅に畳まれた古いマットを背に疲労した体を休めていました。
隣にちょこん。座ると規則正しい寝息が聞こえてきます。
よっぽど疲れていたんですね・・・。
きっと私よりずっと神経を張り詰めていたに違いないです。

月明かりに照らされる、無防備な寝顔。
いつもとは違うシベリンさん。
でも、眠っていてもカッコイイです・・・。
なんだか胸がドキドキしてきました。
指先で頬を撫でてみたり、さらさらの銀髪を梳いてみたり、意味もなくあなたに触れている私。
気がつくと、少しだけのびをして頬に触れるだけのキスをしていました。
すると、突然シベリンさんが体を捩って・・・
「んん・・」
し・・・心臓が飛び出すかと思いましたぁ・・・。
「起きなくて良かったです・・・」
どうしてこんなことをしてしまったのか、ティチエルには分かりませんでした。
ただ、とても愛しい気持ちで胸がいっぱいになって・・・彼に触れたいって思ったのです。



早朝。ここを脱出するために部屋を抜け出しました。
誰もいない廊下を、再び走り出しました。
出口はまだ見つかりません。
(1階なのに窓から出ようとかいう考えはないらしい・・・w)
朝食を食べているお客さんの間をドタバタ駆け抜けると、職員に見つかってしまいました。
でも、もう出口は目の前!

外へ、ジャンプ。
なんだか楽しくって、走りながら二人でお腹を抱えて笑いました。

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「ほっぺたにchu」が初々しいなー。