中国学生軟式庭球選抜インドア大会

教三 原純子

 去る11月29日(土)に広島県立体育館において、中国学生軟式庭球選抜インドア大会が行われました。

 この大会は、今季(S55年度)の大会の個人戦結果によって選抜された男子15ペア、女子11ペアと招待選手男女ーペアずつ計男子16ペア、女子12ペアによって行われるもので、試合方法は、男子は1ブロック4ペアずつ、女子は1ブロック3ペアずつ、4ブロックに分かれ、それぞれで予選リーグを行い、その結果1ペアずつが決勝トーナメントに出場し、優勝を争うというものです。その際、ブロックの組み方は女子の場合
A……招待選手・ランキング 7・8
B……ランキング 1・6・9
C……ランキング 2・5・10
D……ランキング 3・4・11
であるということでした。

 この出場の連絡をいただいた時に、私たちはランキング8位であるということを聞いたので、招待選手とあたることができると思い、この二度とないチャンスに思う存分頑張って、何か一つでも新しいものを身につけてこようと思っていました。

 ところが、当日になっていざドローを開いてみると、私たちはBリーグに入っており、ランキング1位の広大、羽根・村上組と、岡大、白神・石原組とあたることになっていたのです。驚きと同時に、あたらなくてよかったとホッとした気持ちと、せっかくの二度とないチャンスをのがしてしまったという残念な気持ちとが混ざりあって複雑な気持ちでした。ただ、希望の燈がチラッと見えて来たのは事実で、本番になってみなければわからない、こうなったら、当たって砕けろだと、良い意味での開き直りの気持ちになることができました。

 いよいよ本番。初戦は3コート第2試合、相手は羽根・村上組。この組との対戦は今季の中選の団体戦準決勝であたって以来2度目でした。あの時はものの10分足らずで完敗。結局、彼女たちは個人優勝を成し遂げたのです。ところがこのゲームに関しては、あの時の才が見られませんでした。村上さんは、四回生なので練習不足という所為もあると思いますが、イージーボールをネットアウトなさったり、羽根選手の方も、以前はバックラインギリギリをつくロブとパワフルなシュートを巧みに使いこなした展開をしていたのに、今回はロブが短くシュートもそれほど威力が感じられませんでした。それとは対象的に私たちは軟弱ながらミスがほとんどなく、ペアのポイントのかみ合いがうまくいって、結局C-2で勝つ結果となりました。この試合を見ていた人も驚いていたようでしたが、何といっても一番驚いていたのは我々本人でした。試合終了の礼をした直後、二人顔見合わせて“勝っちゃった”、これが、試合後の正直な気持ちでした。

 ラッキーで勝てたゲーム。こうなると人間、欲深くなるものです。よし、こうなったら次勝って招待選手とやろう。願ってもない好運が我々に勢いをつけてくれたのでしょうか。2コート第6試合目、対白神・石原組戦も常にリードのゲームはこびでC-2と快勝しました。

 そして決勝トーナメント。くじびきの結果、準決勝はランキング3位の広大、西岡・相本組とあたることになったのです。ここでもまた、私たちは好運に恵まれたのでした。というのも、このペアとは何度も対戦経験があり、過去2試合においては、どちらも勝ちをおさめていたので、意外と自信を持って試合をすることができたのです。結局、常に優勢のまま、D-2で勝つことができました。

 この試合内容は我々にとって久々に会心の出来ばえであったようです。まず足がよく動いた。私が前衛に立ってて、思ってもいないボールが後ろからかえってきたりした。又、ミスが少なくポイントで試合を進めることができた。それと、中選以後力を入れてきたフォローがやっときまり出し、3ポイントもあげることができた。これらによって私たちは初めて決勝戦に出場することになりました。

 ついに念願の招待選手とあたることができるのです。初めての決勝戦進出を夢のように思う気持ちと、決勝戦にふさわしい試合をしなければならないという使命感などから緊張を感じざるをえませんでした。今年の招待選手は松陰女学院大の木庭・浜本組。このペアは全日団体優勝の立役者であり、この大会でもその強さで、まだ1ゲームもおとさずに決勝まで勝ち進んで来ていたのです。私たちは何よりもまず精いっぱい頑張ること、そして1ゲームだけはとることを目標としました。そして、私個人としては、それまでの彼女らの試合を見ていたので、あのパワフルなシュートボールを一本でいいから必ずポーチに出て決めてやろうと思いました。

 ところがいざふたを開けてみると、相手はパワフルなシュートボールから百八十度転換し、安定したロブを使って巧みに我々を混乱させるのです。そのロブの正確さといったら、いくら来ると思ってさがって待っていても届かないほど深く、それでいて速い。これが攻撃のロブなんだなとこの時思いました。というわけで最初の3ゲームは3ポイントしか取れずあっけなくすぎていってしまったのでした。この時の会場の静けさといったら。自分でもなさけないほどでした。これじゃあいけないと思いながらもどうしたらよいかわかりませんでした。ところが次のゲームをいつの間にか取ってしまったのです。そして次のゲームも。相手のミスの助けもあったのですが、ここで何とかせねばと無心でぷつかっていったのが良かったのでしょう。しかしふんばりもここまで。7ゲーム目はアドバンテージを2度も握りながら、結局2-Dで負けてしまいました。

 この大会を振りかえってみて一番心に残っているのは“強さ”という観念です。羽根・村上組は、中選では完敗であったのに、この大会ではまぐれであってもつぷすことができた。しかし木庭・浜本組を負かすことは今の私たちには絶対無理だと思われるのです。もう少し砕いて言えば、我々が好調であれば不調の羽根・村上組には勝てる。しかし木庭・浜本組はどんなに不調であっても我々には負かすことはできないということです。

 結局“強さ”とはこんなものではないでしょうか。我々は人間という生き物ですから調子の波がある。この波をいかに高いレベルでかつ直線に近い型に変化させていくか。この二つを同時に兼ね供えて初めて強いといえるのではないかと思うのです。しかし、とかく波の到達点は高いレベルであっても、波が大きく不安定であるため勝てないといった場合がよくあるように思われます。

 私たちは練習します。この際高いレベルをめざすことも大切です。が同時に、安定性の確立、つまりは自分のテニスをどういうものに確立するかという方向性を頭に置いた上で練習することが大切なことではないでしょうか。