五大学遠征記

教三 厨子恵子

 第三十一回中国五大学軟式庭球の部は、七月十二日より広島市内の三つの会場で行なわれました。

 本年度も昨年度と同様に雨にたたられ、結局団体戦は消化しきれたものの、個人戦の方は途中で中止ということになってしまいました。

 団体戦初日は朝から雨が降り続き、お昼過ぎからの開始となりました。女子団体戦は広大工学部の二面のコートで行なわれ、我が鳥取大学の初戦は対山口大学でした。

 山口大学は昨年度の五大学で佐伯・阪井組に三本回しをされた苦い思い出のある大学で、今年も苦戦が予想されましたが、結果はB-Oでとばすという快調な滑りだしとなりました。

 一次戦、まず厨子・原組がC-1で勝った後の第2試合、田中・中村組の相手は山大の柱である佐伯・阪井組でした。田中組は一ゲーム目は取ったものの、後は競り合いをがらここ一本が押えれずゲームカウント1-3と追いつめられてしまいました。もはやこれまでかと諦めかけた時でした。田中組の猛反撃が始まったのです。田中さんが続けて、ここという時のサイド抜きがおもしろいように決まるのです。中村さんも危なっかしくではありましたが、ボレーが決まりだし、ファイナルゲームではクロスに出て取るだけでなくアタックも止めるという調子でした。結局最後のゲームを4-Oで取ってゲームセット。この瞬間の鳥大ベンチは大変な騒ぎでした。挨拶をすませて帰ってくる田中組を囲んで皆が肩を抱き合い、三年の女子などは目を潤ませて、まるで優勝したかの様な騒ぎです。そして、第三試合目も古家・田村組の貫禄勝ちで、初日は意気揚々と帰途についたのでした。

 大会二日目は、カラリとまではいかなくとも、まず雨の心配はない穏やかな天気。会場も広大附属高等学校の四面のコートに変えられ二試合並行の速いぺースで試合が進められていきました。

 前日の対山大戦の興奮がまだ残っている中で、次の相手は広島大学でした。広大は片白・渡部組が卒業した今では、歯がたたないほどずば抜けて強いペアというのもいず、ひょっとしたら勝てるのではないかという期待で試合に臨んだのでした。

 しかし、結果は厨子・原組が西岡・相本組を一つ食っただけの惨敗でした。中国ランキング第三位の古家組が練習不足からか、当然勝てるだろうと予想された陰山・数井組に調子の出ないまま負けてしまい、私達もゲームカウント2-2まではいったものの、あと2ゲーム押し切られてしまったのでした。この試合では、一年の瀬尾・但田組を、勉強の意味からも広大の大将ペア羽根・村上組にあてて、一次戦を2-1として有利に運ぼうと考え、こちらの思惑通りのオーダーで対戦したのですが、やはり「打倒広大」の壁を打ち破ることはできませんでした。この訣合で痛感したことは広大の層の厚いことで、正直なところ陰山・数井組にダブルパンチを浴びるとは全く予想していず、自分たちの考えの甘さを思い知らされた試合でした。

 広大に負けて休む間もなくすぐ岡山大学が待ち構えていました。この頃になると、試合も半分以上が済み、岡大か鳥大の勝者が二位になるであろうと考えられました。

 一次戦は私たち厨子・原組が一つ残っただけとなり、二次戦も相手が一年ペアということもあって何とか勝ち、三次戦で白神・石原組と対戦することとなりました。ここで、私達はバックの応援をよそに何か気の抜けたような試合をし、気がついた時にはゲームカウント1-3、ボールカウント1-3でマッチポイントを握られていました。しかしこの次に、原さんが早いテンポでとび出して華麗なクロスボレーを決め、その後、急に試合のぺースが変わり目が醒めたかのように元気も出て、ファイナルまでもつれ込んだのです。ここまで行けば勝ってしまえばいいものを、2-1とリードした次のポイントでアウト、セーフでもめてからあっさりと取られてしまったのです。この試合には大変悔いが残り、敗因は最後の五大学という白神さん達に比べて、勝つことへの執念が足りなかったからだと思います。

 最後の相手は島根大学でした。長い岡大戦が済んだ後少し休む時間をいただいたのですが、一次戦が終わってみると古家・田村組が残っているだけでした。ここで古家組は段々と本来の調子を取り戻し、華麗な三本回しをしたのです。今大会、古家さんは調子が良くなく、対島大戦のオーダーは田中・田村組でいこうかという考えも出たのでしたが、負けても勝っても最後の試合を古家・田村組と一諸に出たいということに決めて良かったと思いました。と同時に、ここぞという時に底意地を発揮する強さをまざまざと見せつけられたのでした。

 結局、総合順位は広大、岡大、鳥大、山大、島大となり、昨年度の四位から一つ上がりはしたものの、対岡大戦、広大戦での試合内容には不満が残り、私としてはやはり心のどこかで広大、岡大にはかなわないというような弱気があったのではないかと反省しております。

 大会成績、内容は以上のような具合ですが、本年度の大会は非常に意義あるものであったと思います。まず、一番の印象というと田中・中村組の山大戦ですが、この時の鳥大チームは非常によくまとまっており、メンバー十二名が一丸となって勝ち得たものだったと思います。確かに試合をするのは二人なのですが、この二人というのはあくまでも一つの部品にすぎず、後ろの応援の勝たせようという意気込みを二人がキャッチしてこそ初めていい試合ができるのです。(私は今でも、田中さんたちの勝因の一割ぐらいは私の念力のおかげだと信じております。)そこに、団体戦のおもしろさがあり、団体戦にこそ軟庭のすばらしさがあるのだと思います。

 来年度の五大学に向けての課題は、まず苦手意識をなくすこと、特に広大に対して強いとか、かなわないとかいう気持ちを持たないことです。いくら競った試合をしたとしても勝てなかったとか、大事なポイントを取れなかったというのはどこかに甘えがあるはずです。「ここまでやれれば…。」という気持ちがあるのだと思います。第二の課題として、体力をつけること。この場合気力ももちろん含まれます。五大学の試合は立て続けにあり、長時間精神を集中できるだけの体力・気力が絶体不可欠だと、私は今大会を通して痛感しました。来年度は是非ともこれらの課題を克服して、老体にムチ打って最後の五大学を悔い無きものにしたいと思います。

 長々と私事中心に書きましたが、男子の試合の方は会場が違うこともあって触れなかったことをお詫び致します。

 それでは、第三十二回五大学を目指して頑張りましよう。